世界で最も有名なファンタジー映画と言えば、ハリー・ポッターではないでしょうか。これは児童文学であり、「賢者の石」や「秘密の部屋」まではどちらかというと子ども向けの映画に仕上がっていました。ところが、原作も話が進むにつれ、およそ児童文学とは思えないダークファンタジーとなっていきます。映画の雰囲気も暗く、ファンタジーとしては非常に珍しい「死からの復活」がありません。
生き返りはファンタジー世界ではほとんどあるもので、ナルニア国物語ではライオンのアスランが、指輪物語では魔法使いのガンダルフが蘇っています。ところが、ハリー・ポッターでは生き返る人がいません。ハリー自身が「生き残り」であることなどはありますが、厳密に言うと生き返っているわけではない理由があります。
作者はこの物語を通して最も伝えたかったことが「死」だと言っています。映画では、主要キャラクターがあっけなく死んでいきます。あれは死だったのかと疑うほどにあっさりと。蘇りがなく、どんなキャラであれ死が唐突に訪れるのが他のファンタジー作品と違うところです。
映画は監督が入れ替わりながら作られましたが、作者であるJ.Kローリング氏の許可のもと作られたので、表現の仕方は違っても話に矛盾がないように作られています。原作のページ数が非常に多いことから、最後の作品、「死の秘宝」は2部作となりました。原作ファンを裏切らないようにするための配慮です。そうしないと、話の濃厚さを2時間ちょっとでは語りきれないのです。原作を映画化するとどうしても省かなければならないところは出てきますが、ハリー・ポッターの場合はそこが比較的上手く行ったのではないでしょうか。
